掛軸制作の楽しみ方
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掛け軸は書や画といったものを、「表具師」と呼ばれる専門の職人が痛んだ部分を修復し、新たに鑑賞・保存できるように表装を施します。この作業は非常に複雑で、経験と熟練が必要となってきますが、用途により様々な楽しみ方ができます。
すぐに掛け軸に仕立てたいという方は、書いてすぐに掛けられる白紙の掛軸を購入し、字を書くだけで書道の掛軸が出来上がるというものがあります。また、お子様の習字や自分で作った書や水墨画を表装したいという方には「アイロン掛け軸キット」で掛け軸に仕立てるという方法もあります。
おしゃれな掛け軸制作なら「手作りキット」をおすすめします。楽しみながら、自作の掛け軸ができます。タペストリー、イラスト入り、色紙、ミニ掛け軸、掛け軸カレンダー、英語の掛軸といったモダンなものも制作できます。便利なスタンドを使えば、「和室」「床の間」といった場所を選ばず、洋間にも合う掛軸ができそうですね。
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掛け軸の修復とは
書画や絵画を紙や布などを張り、丈夫にします(裏打ち) 。 装飾をして、掛軸や額に仕立てる日本の伝統技術を、表具または表装と言います。
掛軸は表装の代表で、表装には額装や屏風・衝立、巻物・手鑑・画帖のほか襖などがあります。 このようにして仕立てられたものを、表具と言う場合もあります。
掛軸は、伝統技術であるデンプン糊による技法で裏打ちします。この技術により、水分でデンプンを溶かすと、裏打紙を安全に剥がす事ができるようになります。こうして、見た目の美しさだけでなく、長期保存に適した書や画に再生していきます。従って50年後、100年後の修復や仕立て直しということも可能になってきます。
掛け軸の歴史
掛け軸は、中国から飛鳥時代に伝わりました。中国では仏画を、掛物として桐箱に入れて持ち運んでいました。
鎌倉時代になると、禅宗の影響を受け、花鳥風月の水墨画をさらによくみせるものとして発達しました。
室町時代以降は、茶道において、茶室の床の間を飾る茶掛けとして発展しました。水墨画や禅語の掛け軸を飾るようになりました。日本人のおもてなしの精神ともいえる、相手や季節、昼夜の時間により、掛け軸をかけ替えるといったことも、この頃から行われるようになりました。
江戸時代に入ると、明朝式表具が入り、文人画には文人表装を使うようになりました。日本画を楽しむ文化が定着し、掛け軸も肉筆浮世絵という形で発展していきました。
明治、大正期には日本画と共に、さらに掛け軸も発展していきました。しかし昭和に入ると戦争という時代背景もあり、掛け軸の需要も激減しました。戦後は洋風建築の増加により「床の間」離れが目立っています。
掛け軸の種類
花鳥図、
山水図、仏事(仏書・仏画)、お茶席(書・墨蹟)、おめでたい掛け軸(鶴亀)、迎春(日の出)、お正月、お祝い(富士)、開運(鯉の滝登り)などです。「対幅」(ついふく)連作となる複数の書画を同じ表装で仕立てたもの。対幅には双幅、三幅対、四幅対、12ヶ月を描いた十二幅対などがあります。床の間にかける掛け軸を「床掛け」ともいい、「床掛け」以外の掛軸に、仏壇の中に掛ける掛軸として本尊や脇侍の絵像、名号法名軸があります。
表装について
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掛け軸は茶道の歴史と共に、発展しました。茶室に座って見上げたとき、掛け軸が美しく見えるように、床の間の大きさや畳の大きさも考えた上で、掛軸の寸法が定められています。
- (関東)
- 上一文字の丈=下一文字の丈×2
- 天の丈=地の丈×2
- 上部と下部の比率が2対1
- (関西)
- 関東よりも畳が大きいこともあり、上部と下部の比率が、2対1よりも上部を若干短めに作られています。
表装に用いられる材質は、紙や裂(きれ)で、裂は金襴、銀欄、緞子(どんす)、紗(しゃ)が使われています。共裂(ともぎれ)が使われるのは、一文字と風帯です。そして中廻し(ちゅうまわし)には変化をつけるため、別の素材が使われています。裂の取り合わせによって、掛け軸は全く別の表情を見せるようになります。
大和表具とは、上(天)、中廻し、下(地)の三段に分かれ、風帯(中国では昔掛物を屋外で鑑賞しており、燕除けの為に風帯をつけました。日本では装飾として発展しました)を上部につけます。掛け軸では最も一般的な様式です。(写真)
文人表具、袋表具とは、掛け軸が中国から伝わったままの形で伝えられているものです。同じ裂で上下と柱をつないだもので、一文字を入れたものや本紙廻りに筋を入れたものもあり、風帯はつけません。おもに南画や文人画、漢詩などに使われます。
茶掛表具、利休表具とは、茶席などに用いる、中廻しの幅を狭めた掛け軸の様式です。
本尊表具、仏表具、神聖表具は、宗教的内容の絵や書に用いられます。中縁の内外に筋を廻す様式です。
軸先は象牙、熱帯産のマメ科の木からとれる紫檀、カリン、堆朱(ついしゅ)、水晶などが使われます。南画には木製の軸先、仏画には金属、水晶の軸先が使われることが一般的です。
軸装とは、書画を表装し、掛け軸に仕立てることを指します。 |
掛軸の取り扱いについて
掛軸を掛ける際には、矢筈あるいは掛物棹と呼ばれる道具を使います。自在掛(高さが調節可能)を介して掛けると、フックや釘などが高い位置にあっても容易に掛けることができます。
- 紐尻を持ち、巻緒を解きます。
- 掛け軸を正面前方に離して置き、右手で一文字が見えるくらいまで広げます。
- 風帯の織癖を直します。
- 掛軸を左手に持ち、右手で矢筈を持ちます。
- 矢筈の金具を掛緒にきちんと掛け、所定のフックなどにしっかりと掛けます。
- 掛け軸をゆっくりと広げ下げます。下げ終わったところで左右のバランスを取ります。
- 風帯が有れば下に広げ、風鎮があれば軸先に掛けます。
- 巻癖がついていたら、軽く逆巻にして直します。
- 掛け終わったら、少し離れた所に座って、表具の高さ、曲がって掛かっていないかなど点検します。
掛け軸収納について
取扱い方と全く逆の順序で行います。
表具は軸の所をしっかり持ち、軸を落とさないようにして広げてください。
巻く時は表具を体から離して、持ち上げて巻いてください。全部巻いてから、膝を利用して巻き締めてください。その時も、両手でそれぞれ軸先を持って巻き締めます。そして、左手で軸の中央を持ち、巻きを揃えます。
掛軸は湿気や防虫効果もある桐箱などに収め、専用の防虫香を入れて温度変化の少ない場所に保管するようにします。ナフタレン等の防虫剤は軸先を痛める場合もあるので、注意が必要です。
納期と価格について
作品の大きさ、お直しの程度にもよりますが、1ヶ月~3ヶ月を目処にお預りします。
作品の大きさだけで比べた場合、半切作品を例に挙げると、業界での伝統表装は数万円~10万円以上が相場です。 詳しくは作品を見せていただいて、お見積もりをさせていただきます。